流れて消えるだけじゃ、語り合えないから

この人いいな、という人は、前向きでも後向きでもなく、ただ中間の状態でその場を動いているだけ。

日本一寂しい旅を追求する?(前編) 奈良山奥、廃村への道

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この企画は、旅で感じる「寂しい」をとことん追求するものである。

どうせやるなら、とことん「寂しい」旅にしようじゃないか。

 

僕は基本的にさみしがりだと思う。

同時に人間嫌いなところもある。

 

そんな人だから、賑やかな場所は苦手だし、繁華街に出てくると、やかましさや広告・騒音の過剰さに辟易してしまう。ここ数年、大都市を楽しむ旅ができなくなってしまったように思う。

 

それ以上に、縁のない人々の中に一人でいることは、さみしくてたまらなくなるから、行きたくないというのもある。

 

だからこそ、ここ数年の旅は山奥や大自然などの、人の気配が少ないところに行くのが中心にシフトしている。

多くの人は、こっちの方が寂しいじゃないかと感じるだろう。*1

しかし僕の場合は、”寂しい”場所で、「今日は、○○山へ登るぞ!」「秘境△△を目指すぞ!」と目標に向かって進んでいる最中は、寂しいなどと意識しないのである。

むしろ知らないものに向かって進むことに、興奮したり、バイクの操作で余計なことを考える暇がない。

 

では、どんな旅が「寂しい」のだろう?

この企画は、旅で感じる「寂しい」をとことん追求するものである。

どうせやるなら、とことん「寂しい」旅にしようじゃないか。

 

そんな意気込みで始めた旅のルートを紹介しよう。

 

 A:和歌山県橋本市→B:高野山(壇上伽藍)→C:【奈良県】陣ヶ峰→D:野迫川村→E:池津川集落→F:中津川廃村→G:国道168号入り口→H:宗川野集落→I:城戸駅→J:奈良県五條市

※今回はC:陣ヶ峰まで

 

秘境と呼ばれる奈良県南部(高野山の裏)をぐるりと回り、廃村といわれる「中津川」を目指し、十津川村の手前を通って奈良県五條市に戻ってくるルートだ。

 

さみしさと孤独は違う。

孤独は自分ただ一人しかいないという状態だ。

しかし、「さみしい」とは違う。

孤独であってもなくても、「さみしい」感情は出てくるのだ。

 

廃村は、人が存在しない孤独な場所とはいえ、人がいろんな想いを残して消えていった「さみしい」が詰まった場所だと思ったので、今回の目的地に選んだ。

 

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★すっかり観光地化しちゃったけど美しい、高野山

10月某日、昼10時頃出発。

日帰りなので、持ち物は最小限だった。

山奥で遭難したときの携帯食*2

 

そして昼食も「寂しい」を追求するために、

冷や飯に、野沢菜漬を添えてラップでくるんだだけのものと、お茶を持っていった。

カメラはいつものように、GPSとコンパスと高度計付き。*3

 

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大阪から和歌山県橋本市までのアプローチは、高速道路とバイパスを使う。

そこまで時間はかからなかった。

 

和泉山脈高野山地に挟まれた、谷あいの市。

大阪から電車で1時間の通勤圏内だが、三大都市圏とは違う地方都市のにおいがする。

中心部の国道を離れれば、すぐ田園風景だ。

 

そこから高野山へは山道となる。

10月はバイクの季節だ。道には何十回もバイクとすれ違ったり、並んだりした。*4

途中には、大河ドラマ真田丸」の舞台にもなった「九度山町」もある。*5

 

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高野山への道路は、山道ながら快走だ。

しかし、車やバイクが多い。高野山に近づくにつれ、途中で何度もストップする。

「車で来る人が多すぎるんじゃないか?自然保護の観点からマイカー規制した方がいいんじゃないか?」と、余計なお世話が頭をもたげてくるくらい、多い。

 

1時間もしないうちに、高野山についた。

本来の目的地じゃないので、少し寄り道程度に考えていた。

 

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それにしても、前に来た7年前に比べて、観光客が一気に増えた。

 

12年前の12月24日。

巷のクリスマスムードが嫌で、高野山のような仏教都市ならクリスマスは押し寄せてこないだろうという理由で、初めて行ったときは、人もほとんど歩いておらず、地元のお年寄りの姿をたまに見かける程度で、本当に静かで、神秘的だった。*6

 

今じゃ、境内や歩道に人がたくさんいる。

高野山は信号機が少ない。

信号機のない歩道を、増えた車の隙を見て渡ろうとする人が後を絶たなかった。

 

カフェのようなファミリーマートまでできた。

ここは文明だ。お茶を買い足す。

 

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1ヶ所だけ、「壇上伽藍(だんじょうがらん)」という場所に寄り道した。

大きな金堂と巨大な朱塗りの仏塔「根本大塔(こんぽんだいとう)」など、様々な仏教施設が広大な敷地に建っている場所だ。

空海高野山を開いたとき、最初に創建した場所といわれる。

 

根本大塔を拝観した。

金色の大日如来を中心に4体の如来仏と、さらに周囲に配置された約10本(?)の赤い柱には、菩薩様の絵が描かれていた。

最初に大日如来様の前に立って、時計回りで、建物の四隅を回っていくような拝観だった。

 

あまりにも贅沢で眩しかった。

平安時代仏教徒が想像していた天国は、こんなにも色鮮やかで贅を尽くしているのだろうかと。

誰がどう見てもわかる、神々しさ」とは、この煌びやかさのことかもしれない。

 

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大日如来様の前には、賽銭箱と焼香台があった。

ふと、今年の秋、がんで亡くなった友人の奥さんを思い出した。

福岡に住んでいて、僕が福岡に旅行した時は、いつも滞在する場所なので、とってもお世話になった。

 

僕が彼らにできることは、この場で奥さんのことを想いながら焼香することくらいかもしれない。

僕は天国に近い山で、手を合わせ、真言を唱えた。*7

高野山九度山も、またの機会にじっくり見よう。

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★山の稜線を走る絶景道路

高野山から分かれると、いよいよ「裏高野」と呼ばれる秘境に入る。

1000~1300m級の山が、いくつも入り組んだ、紀伊山地を進んでいく。

目的は、「野迫川村(のせがわむら)」だ。

 

そこへ行く道で、面白い道を見つけた。

奈良県道53号線だ。

この一般道路は、高野山から野迫川へ行く途中まで、

「陣ヶ峰」という山の稜線(尾根)の上を走っているのだ。

 

なので、ところどころからパノラマが開けて、何度もバイクを停めて写真を撮りたくなるほど、気持ちがいい道路だ。*8

尾根の上ということもあり、左手だけでなく、右手にも視界が開けて、鬱蒼とした森の中を進むイメージが強い奈良県南部の道では珍しく、景色の良い道だった。*9

 

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その先、野迫川村五條市大塔方面の分岐点(地図C)に差し掛かったとき…、

一気に大展望が開けた。

 

山また山に阻まれて、なかなか遠くまで見渡せない紀伊山地にあって、

海の向こうまで見渡せるんじゃないか、というくらい、遠くの山まで見渡せた。

 

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ギザギザに落ちていく山と谷や、これ以上ないくらい深い谷を近くで見られたり

これまた贅沢な景色を拝むことができた。

なお、雨の後には雲が広がり、雲海を見ることができるという。

まさに、高野山にはよく合う風景だ。

 

それからほどなくして、野迫川村に入る。日本有数の過疎の村だ。

次回をお楽しみに!

*1:まだまだ日本人の多くは、寂れた場所・観光地を嫌がる傾向にある。自分の寂しさに向き合う辛気臭いことが嫌なのだろうか。みんなの「寂しさ」とは何だろう。

*2:最近の避難食は進んでいる。京都の有名パン屋「ボローニャ」のデニッシュパンを缶に詰めて、賞味期限を3年としたものや、井村屋の「チョコえいようかん」という栄養を最大限に取れるようかんなどもある。

*3:ニコンAW130という機種を昨年10月に買った。スマホを持ち歩かないで紙の地図しか持たない僕としては、GPS機能付は、道に迷ったときに役立つ。2mの高さから落としても無事だし、水深30mまで潜れるので、ダイビングカメラにも使える。しかし、高度計はあまりあてにならない。

*4:途中「かじかドライブイン」というのが山の中にあったが、3、40台くらいバイクが駐輪してあるのを見て、「ここはツーリングの聖地か!?」と思ったくらいだった。

*5:途中「真田○○祭り 本日開催」という立て看板があったが、真田丸目当ての観光客は、そんなにいなかった。

*6:観光シーズン外だったこともあるかもしれない。たしかその日の気温は、-2℃。道路も凍って、バイクが何度もスリップしかけた。

*7:真言は「仏の真実の言葉」という意味で、自分の意識を本尊に向けるためのもの。大日如来に対しては「おん あびらうんけん ばさら だどばん」と唱える。なお、真言宗で「南無阿弥陀仏」にあたる言葉は「南無大師遍照金剛」である。

*8:そのせいか、ドライブに来ている(?)外車やスーパーカーを比較的多く見た。

*9:ただし、標高は1000m級なので、基本的に森林の中を走る。