いける!意外といけるぞ、便所飯
つい最近、便所飯をしてしまった。
店に入るほどの金も持っていなかったし、そんなに腹も減っていなかったので、パン2個くらいで充分だったし、すぐ次の電車に乗らないといけないので、駅の個室便所で食べる音を殺して、菓子パンをかじっていた。
駅のトイレは静かだった。周りに人が少なく、声を立てる人もいない。
別ににおいがしたり、虫が出るわけではないので、大して不潔さを感じずに過ごせた。
食べているときに出る音(かじる音、袋をいじる音)を殺さなければならなかったけれど。
一番だったところは、人から見られることがないことだ。
飲食店で食べていたり、公園で弁当を広げていても、誰かに見られるということがある。
最近、ラーメン屋でも、客席の両サイドに間仕切りがあって、後姿しか見られないようになっているが、
トイレの中では、完全個室である。
誰がどんなことをしているかを気にされることはないし、よほど強烈な音やにおいを立てない限りは、人から気にされることはない。
人の視線がいまだに怖い僕としては、人の視線を気にすることなく、ストレスのない昼食を過ごすことができたのだった。
ネガティブ?便所飯の良いところを探そう。
便所飯は、「仲間外れ」や「負け犬のシンボル」と扱われていて、便所飯状態になることは惨めだと思われている。
普通な状態でいないと、自分を保っていけない学校なんかでは、いじめに匹敵するくらい、とても屈辱的な扱いだ。
しかし、そんなに引け目を感じることはない。
便所で食事をしていることが周りに知られなければ、なんでもない人扱いだし、
アリバイを作っておきたいときは、「お外で食べてくる~」とでも宣言して、トイレにでもこもっておけばいい。
バレなきゃいいのだ。
便所の中は汚い?それはごもっとも。
しかし、どこのトイレもプロの清掃業者が、1日1回以上は丁寧に掃除をしていて
清潔に保たれているのだ。
そんなに掃除をする機会が多くない、家のトイレよりも、衛生的かもしれない。
大学やショッピングモールのトイレなんかで、いかにも汚くて、虫がわいてそうなのを、今どき見るだろうか?
「負け犬のやること」「汚い」という面をクリアしたら、
便所飯のいいとこ探しをしてみよう。
(1)やかましい場所から遠ざかれる
学校の教室、会社の食堂、フードコートなど、大きな音に溢れている。
個人的に、僕はざわざわと大きな音がする場所が苦手なので、そこでの食事はノイズキャンセリングホンが命綱だ。
しかし、トイレに行けば、打って変わってそんなやかましい音はなく、静かだ。
おしゃべりな人も、一人トイレに行けば、不思議なくらい黙り込む。
人はいても、無口にしている人ばかりだから、静かな場所なのだ。
静けさを手に入れるには絶好の環境なのだ。
(2)誰からも見られない
この環境は貴重だ。
人間が家の外に出ると、大なり小なり、人の視線にさらされる。
学校や会社では、知っている人に会って、あいさつや世間話をして、ときに気を使ったりして、悪い印象を与えないように気を使ってしまう。
いつも誰かに見られて、見られていることを意識して行動するのは大変だろう。
そんなとき、四方八方を壁に囲まれ、誰にも見られることのないトイレの個室は、
人の視線から逃れることのできる、バリアーみたいなものだ。
そんな中だからこそ、こんなことができる。
(3)ちょっと変な行動をしても、見られないので、変に思われない
例えば、ちょっとにやけたり、独り言をつぶやきたくなることがあるだろう。
しかし、他人がいる場所では、それを少しでもやろうとすると、変な人に思われてしまう。
人のいない場所では、そんなニヤけたり、(トイレに誰もいないときに)独り言をつぶやいても
誰も見ていないし、聞いていない。
あなたのことを変に思う人なんていないだろう。
…と、こんな風に便所飯の良いところをあれこれ並べてきた。
トイレは実に優しい空間だとわかってもらえただろうか。
困ったときは、トイレに逃げ込んでやりすごすのも手だ。
僕は専門学校にいた時期があったのだが、そこは教室に生徒があふれ、やかましくて、とても食事なんてできなかった。
人の視線にさらされ、人と応対していないといけないのが、とても苦痛だった。
ビル一棟という、とても狭い敷地に、たくさんの生徒がいたので、常にどこかに人がいる状態で、窮屈だった。
そんなときに、僕は視線と騒音から逃げるように行ったのが、トイレだった。
トイレで食事をしていると、生徒や周囲の環境から距離を置くことができ、少しは楽に過ごすことができたのだ。
便所飯も悪くない。ストレスフルな環境の中で生きるための、茶道のような知恵なのである。
余談
便所飯を絶賛する宮充ですが、
「ひとりぼっちをより良く生きるミニコミ誌、『ボッチライフ vol.2』」
便所飯特集で、インタビューを受けております。
スリリングに便所飯をやりすごすコツ、そしてクリエイティブな便所飯のノウハウ等
気になる方は、この本を手にとってみてください。