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漂流、いいじゃないか!

周りのことばかり気にしてきた人が、「周囲のことを気にしないで、やりたいことをやる」をモットーに書いてます。趣味、旅行、哲学などの話を書いています。

すごい日本奥地紀行【南信州編】 第9回 御嶽パノラマライン

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【第9回】

大阪→→馬籠宿→(長野県)妻籠宿遠山郷→下栗の里→ 諏訪大社奈良井宿

御嶽神社開田高原岐阜県)御嶽パノラマライン→喫茶・五重塔

下呂温泉(3泊目)→ 関善光寺→岐阜大仏→長良川沿いに続く道→→大阪

 

岐阜県に入った。普通に国道を通れば、すんなり整備された道に出れるのに、御嶽山が見たいという理由で、山が良く見えるけど、危ない道を走って、下呂温泉を目指した。

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★御嶽パノラマライン

長かった長野県から、岐阜県にやってきた。

 

香川県よりも広い、高山市の一部「高根村(たかねむら)」は、1700m級の高地にあるので、陸上選手が持久力や酸素取り込み力アップのために「高地トレーニング」に来るという。

 

岐阜県に入ってから3分で、陸上用のトラックがあり、大学の陸上部みたいな人たちが走っていた。

 

いかにも高原の涼しげな道路を行く。

途中途中で、山道を走っている人をよく見た。

 

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人は通るが、車はなかなか通らない。

 

僕はこういう人里離れた山の中に行くと、言い知れぬ恐怖に襲われる。

標高が上がるにつれて、日が傾くにつれて、涼しいというより、寒くなっていく。

 

もし、このまま事故したら…、クマに襲われたら…

 

そんな想像をしているうちに、どんどん人を見かけなくなる。

そして、標高が高くなるにつれ*1高い木がなくなり、低いやぶになり、草だけになってくる。

 

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その風景はきれいで、本当に眺めが良くて、鳥肌が立つくらい美しいと思う。

道を走ると、目の前に遠くまで見渡せる山並みが開けてきて、

思わず「ホォーーーーッ!」と声を上げてしまう。

 

どこまで僕を興奮させてくれるんだこの風景は、と思い、バイクははやる。

 

 

しかし、美しさと自然の恐ろしさは紙一重。

少しでも安全から転び落ちてしまうと、途端に牙をむくものだ。

 

時間は午後4時を回っていた。

日が暮れるまでに山を下りなければ、恐ろしいことになりそうだ…。

 

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山はどんどん奥へ。道を進むにつれて、人の気配がなくなり、

舗装された道路と、動けている自分のバイクだけが、

自然の脅威の中で、自分を助けてくれる数少ない、よすがなのだ。

 

道路案内は「降雨時 走行注意」と告げている。

 

この手の道は、雨が激しくなったりするとゲートが閉まるが、

行く先には、大きな危険がなさそうで安心する。

 

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それまで、山の高い場所にいたらしい。

細く、長く、曲がりくねった道を下り、辺りの木々は、再び高い杉の森に戻っていった。

鬱蒼とした森。相変わらずなかなかすれ違わない車。

そして、怪しいと思っていた雲行きは、限界を迎える。

 

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突然、山道が水浸しになり、小雨が降りだした。

少し前まで本降りだったのか、残った水が、路面の真ん中を川の様に流れている。

 

危険だ!

ガードレールの向こうは御嶽山ではなく、崖。

何かの拍子に転んでガードレールを越えたら、落ちて死ぬ。

路上に石だって落ちているかもしれない。

 

バイクで一番怖いのは、スリップだ。

スリップを避けるための運転をしなければ、命はない。

カーブを曲がるのにも、20キロも出せないくらい、慎重に慎重を重ねて運転した。

 

ただでさえ前に進みにくい山道が、余計に進まない。

 

長かった。

雨に打たれて、レインコートを着て、冷たくなる体で、

雷に撃たれたり、鉄砲水に襲われるかもしれない状態で、

前に進むしかない、あの状況が。

 

 

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「御嶽パノラマライン」という名前なのに、御嶽山なんて見えやしない。

霧がかかった谷くらいしか見えないのだ。

 

途中、通行止めの道があった。

入口はゲートが閉まっていて、赤い横断幕に筆で書いたような字で「一の谷」と書かれていた。

 

ゲートが何気に恐ろしく見えた。それを写真に撮っている余裕なんてなかった。

 

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雨は降ったり止んだりを繰り返した。

雲の向こうに太陽が出て、陽光が降る雨粒をくっきりと照らした。

路面も濡れた水で光っている。

 

太陽が出続けるように、応援している自分がいた。

「いいぞ…!このまま太陽が出て、路面を乾かしてくれ!」

「雲からずっと顔を出していてくれ!」

と、祈りながら進み続けた。

 

時間は午後5時を回っていた。

停まって雨宿り*2をしている猶予もないのだ。

 

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そして、走り続けること30分。

ようやく雨もやみ、曲がりくねった道も終わり、

スピードを出せる道路に差し掛かった。

 

乾いた道を、路面状態を気にせず走れる!なんて気持ちがいいんだろう。

さっきまでカチカチに固まっていた全身や神経が一気にほぐれた気がした。

 

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★喫茶・五重塔

そんな風に走っていると、僕の全神経を脱力させまくる建物が現れた。

 

「な、なんだあの五重塔は!?」

 

喫茶・五重塔」という、手作りの五重塔風の家だった。

 

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境内…いや、敷地には、主人が作ったと思われる、

変わった手彫りの石像が、無造作に配置されていた。

 

大黒様、七福神、シャケをくわえたクマ、城、塔…

 

戦々恐々とした山道から降りてきた僕にとっては、ヘナヘナヘナ~と、背骨まで脱力させる珍彫刻のオンパレードだった。

 

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五重塔は、木造ではなく、プレハブでできていた。

その周りを固めるように、DIYおもちゃの兵隊が、置かれたままになっていた。

 

「喫茶 →」と書いてあったが、明らかに営業していない様子であった。

 

それもそのはず。この五重塔を作った老夫婦は、現在はお亡くなりになっておられ、その息子さんがそのまま住んでおられるようだった。

息子さんは、跡を継いでいるわけではなさそうで、僕が声をかけて「すごいですね」と言っても、いぶかしげな視線を浴びせるだけだった。

 

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★木曽や伊那より、飛騨の方が店が多い気がする

ともあれ、心身が脱力しまくって、気持ちよく走れるようになった。

そうしているうちに、飛騨地方を縦貫する主要道路の「国道41号」が近づいてきた。

 

この写真に写っている、小坂(おさか)の町も、盆の祭りの最中だった。

 

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国道41号を走る。メイン道路なので、遠慮なしにスピード出して走っていた。

 

飛騨といえば、山の中の秘境と思っていたが、国道の途中にちょこちょこ店が出ていて、そこそこ開けているようだ。

ケーズデンキ、バロー(スーパー)コメリすき家、パチンコ屋などが現れ、見慣れた郊外の街並みに戻ってきた。

 

好きではない「ファスト風土*3だが、このときばかりは、ありがたく思えてしまった。*4

 

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もちろん、ロードサイド店舗が、ずっと道沿いに続いているわけではない。

 

集落が点在していたり、

途切れて、渓谷の上を通るような道に変わったりする。

変化の多い道路なのだ。

 

3日目も、長い1日だった。

その日の宿、下呂温泉に辿り着く…。 続く。

 

 

*1:だいたい標高2000mを越えると、「森林限界」といって、森林が存在できなくなる。生えている草木も変わり、高地向けの木、低木、草木や高山植物、苔などに変化し、標高が高くなるにつれ風景も変わる。

*2:展望台のような場所があり、そこに申し訳程度に傘があった。

*3:幹線道路沿いならどこにでもあるような、チェーン店ばかりが並ぶ光景。ファーストフードと掛け、工場で作られたような食材で作られたフードが提供されるような店の台頭が、昔からあった「風土」や商業を駆逐してしまっていることを揶揄していう

*4:写真は、飛騨萩原あたり