すごい日本奥地紀行【南信州編】 第3回 廃墟?大平宿→秘境・遠山郷
【第3回】
大阪→→(岐阜県)瑞浪→馬籠宿→(長野県)妻籠宿→木曽福島→上松(1泊目)→
大平峠・大平宿→赤石峠→遠山郷→小嵐稲荷神社→下栗の里→しらびそ峠→大鹿村→分杭峠(2泊目)→
諏訪大社→奈良井宿→御嶽神社→開田高原→(岐阜県)御嶽スカイライン→喫茶・五重塔→下呂温泉(3泊目)→
★前回まで
2日目の朝。長野県の南東の山奥、「遠山郷」に向けて、山越えが始まった。
最初の難関、「大平峠」(前回参照)で、熊におびえながら潜り抜け、その先に見たものは…?
★大平宿
峠を少し降りていくと、山の中腹に江戸時代の建物が並んでいるのが現れた。
屋根にあまり傾斜がついていなくて、白壁に雪に耐えるための横筋が入った民家が現れる。保存状態もいい。*1
しかし、人が少ない。前に行った、妻籠・馬籠の宿より観光地化されていないばかりか、常に住んでいる人がとても少ないからだろう。
町の外からやってきた地元のボーイスカウトの一団か、宿泊に来た家族連れ10人ほどしかいなかった。
面白いことに、この江戸・明治時代の古民家を、旅行客のためにコテージとして貸しているところも多かった。
その日は5,6つの家族が泊まりにきている姿が目立った。
中には子供たち7人くらいを連れた家族があり、
街道のど真ん中で、子供たちが水鉄砲を撃ち合って、夏休みを満喫していた。
今までの「古い町並み」的な大人しい町とは、一線を画していた。
この町はもっとおもしろいことになるかもしれない…。
★しかし峠は続く
大平宿に着いたところで、まだ峠の1/3だった。
すぐにも飯田の町に着くと思ったら、見通しが甘かった。
峠の入り口には、40kmあると書かれていた。
狭いカーブ道は、たった40km走るのでも、時間が掛かる。
山道はなかなか終わらせてくれなかった。
★ようやく飯田へ。しかし、また峠越え
朝10時前頃。南信州の中心都市・飯田市に着いた。
飯田は、山すその高い丘の上にある町で、僕が町を出るときは、崖の上にある道路を降りていった。伊那平の町の眺めがすばらしかった。
しかし、まもなく遠山郷まで出発しなければならない。
県道83号線、251号線(喬木村の中を通る)を通り、赤石峠に向かう。
★赤石峠 山中に突如現れる、巨大構造物
南信州地域は、徐々に高速道路が整備されてきている。
しかし、地形の険しさが災いしてか、それは途切れ途切れで、飯田と浜松を結ぶ「三遠南信自動車道」というには、とても厳しい状況だった。(実質下道ばっかりだ)
遠山郷の上村に向かうまでの山道を走っていると、突然谷の中に巨大なジャンクションが現れた。
夢を見ているようだった。竜のように長い胴体が渦を巻いたような形状、見上げるような高い位置にある道路を支えるコンクリートの高い柱…。
あまりにも何の変哲もない、狭い山道の先に、こんな巨大構造物が現れると、その存在感に、ただただ圧倒されるしかない。夢中で写真を撮り続けた。
この道路は「小川路峠道路」といって、僕が1時間弱で越えようとしている峠の向こうまでわずか5分で結ぶトンネルだ。「三遠南信自動車道」の一部開業している区間だという。
ほとんどの車は、ここに吸い寄せられていく。*2
そんな車たちをよそに、覚悟を決めて、旧道の細い峠道に向かった。
★巨大構造物の向こうは…、ひどすぎた
旧道の赤石峠に入って、たった1分で、
「来るんじゃなかった」と思った。
それまで大した危険もなさそうな山道から一変。
道路はひび割れ、車は行き違いできないほど狭く、石や砂利が散乱し、時々路肩の崖が崩れ、土砂が道に押し寄せるくらいの荒れ放題。
バイパス道路が脇に出来たからといえ、いくらなんでも、放置しすぎな気がするくらいだった。
常に落石に注意していないと、危険だ。(中には、漬物石くらいの落石もあった)
すれ違った車は一台もなかった。とても心細い。
何かあっても誰も助けてくれないかもしれない…。
しかし同時に、「うわぁ、ちょっとここボコボコすぎだろっ(笑)」と、妙なスリルを感じながら、道に"ついて"いった。
頂上の赤石峠トンネルに到着。
あたかも自然に還りかけている山道の中に、ぽっかりカマボコ型の空洞が空いていた。
1キロくらいある。その中は…、明かり一つない、真っ暗な道だった。
辛うじて、奥に一転の光が見える。
明かりのないトンネルは勘弁して欲しい。
ただ暗いだけではない。天井からコンクリートがはがれて、路面に落ちていることもある。
もちろん、これをバイクで踏んだら、転倒事故は免れない。
僕は、バイクのライトだけを頼りに、一筋の光を目指して、暗闇の中を、時速30kmに落として*3進んでいった。
ドラゴンクエストⅢで、「地球のへそ」という、一本道を勇者一人で進んでいかなければならない洞窟がある。そこでは「引き返せ…、引き返せ…」という声が、絶え間なく聞こえてくるのだ。
僕は、頭の中に流れる(自分からの)「引き返せ…」という声に勝って、トンネルを抜けた。たった1キロなのに、長く感じた。
そこからは山深い道路を降りていく。道はさっきよりましだ。
途中、対面の山の中腹のかなり高いところに、集落があるのが見えた。
「いったい誰が、なんのために住んでいるんだろう…」
そんな山村の未知への憧れを思いながら、遠山郷の谷に降り立った。
今回はここまで!
次回は、遠山郷めぐりをお送りします。お楽しみに。