流れて消えるだけじゃ、語り合えないから

この人いいな、という人は、前向きでも後向きでもなく、ただ中間の状態でその場を動いているだけ。

今「理想の大人像と離れてる!」←昔「そりゃなるの無理だわな(笑)」な動画

90年代に流れていた、大人向けお菓子のCMの動画です。

昼下がりのヨーロピアンなホームで、大人の恋愛映画を見ながら、しっとりとラムレーズンのお菓子を噛みしめて、もの想いにふける女性です。

当時の「大人像」が色濃く反映されています。

今から見たら、「外人そのもの」とか「昼ドラかっ!」とか、「これ、大人というよりマダムでしょ。」という印象を持つかもしれません。

しかし、1970~90年代は、「大人の」を銘打ったものは、だいたいこうした上品な、ヨーロピアンマダムのライフスタイルに憧れているような映像が、たくさん流れていたようです。

こうした映像を見て、幼い人から20代まで、「こんな大人になりたい」と思ったり、「大人ってこんな生活するんだ」と思う人は、少なくなかったかもしれません。

80年代に生まれた僕にも、大人像の形成に影響を与えていった気がします。

現実を知らない僕は、20代でサラリーマンとして生活基盤を整えて、結婚して30代で子供つき所帯を持って、子供が巣立って老後を静かに迎える…

その過程で、仕事で成功し、金に不自由しなくて、大人として責任感とプロフェッショナルを持って、落ち着いていて人生にブレがなく、大人の人付き合いができるようになる…と、漠然と考えていました。

しかし、残念ながら無理でした!!

そりゃムリですね。ブルボンのお菓子のCMに出てくるヨーロピアンマダムは、今はいません(笑)

「理想の大人像」は、目標であり、自縄自縛でもある

「しっとり、大人。」が想定された(?) 30代を迎えても、全然大人に近づく気配はありません。

仕事も成功していないし、金に不自由しているし、大人のウィットに富んだ会話もできないし、それ以前にコミュニケーションも下手くそ。

落ち着いていないし、まだまだ遊びたいと思っているし、ガキくさいところもあるし、責任感なんかくそくらえだし、自分のことなんてまだまだわかっていない、青二才なわけです。

「昔見てた、理想の大人像と違いすぎる…」と、ギャップに落ち込みを感じる人もいるかもしれません。

僕は20代前半は、「理想の大人像」にならなくちゃと思いこんでいたので、

周囲の人に遅れを取っていたと思い、仕事で一人前になり、家庭を持てる、落ち着いた人間を目指そうと躍起になっていました。

しかし、今となっては、ほとんど気にしていません。

理想の大人、いや、周囲の人が求める安定したライフスタイルを目指さなくても、

自分が生きたいように生きて、やりたいようにやれれば、それで幸せになれると知ったからです。

「理想の大人像」に従って生きるには、一長一短です。

なんとなく「こうなりたい」と目標を示し、自分を奮い立たせて前向きに進めていける面もあります。

しかし、同時に「こうならねばならない」と規範意識となって、理想に反したことをしてしまうと、

「こうしなければ理想に近づけない」と、自分を縛ってしまうこともあります。

そして、「こうしなければならないのに…」と、自分が理想に反することをやってしまうと、自分を傷つけることになります。

その自責感が自分の行動を制限したり、自分を欝に追い込んでしまう可能性もあります。

理想の大人に近づきたいという、欲求があります。

毎年「20代から見た、理想の大人ランキング」が発表されていますが、

だいたい「仕事で成功している」「若い容姿、生き方を保っている」「落ち着いている、大人の余裕がある」人が上位に来ています。

そんな人間になりたい、という欲求が強いのでしょう。

しかし、それは人間としてある程度当たり前の営みだと思います。

どんな大人になりたいかより、理想像に飲み込まれないように、適度な距離を保っていられる方が、一番落ち着いていられるかもしれません。

将来のことを考えすぎなときは、「ブルボンのお菓子のCM集」を見て、「こんな大人おらへんやろ~」とゲラゲラしながら過ごすのが、いいと思います。